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大阪地方裁判所 昭和51年(ワ)1823号 判決

主文

一、被告は原告に対し金三〇、〇〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和四八年五月一五日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

三、この判決は仮に執行することができる。

事実

一、原告指定代理人は、

1、次のとおりの判決並びに仮執行の宣言を求め、

主文一、二項同旨。

2、その請求の原因として次のとおり述べ、

(一)、原告は、訴外山下興業株式会社(以下滞納会社という)に対し、昭和四六年六月二四日現在、別紙滞納租税債権一覧表記載の滞納租税債権を有し、

(二)、滞納会社は、昭和三八年三月ごろ、被告との間で、被告から、大阪市北区曾根崎中一丁目一九番地宅地二七〇・七七平方メートル(以下本件土地という)を賃借する旨の土地賃貸借契約(以下本件賃貸借契約という)を結び、さらに被告に対し敷金として金三〇、〇〇〇、〇〇〇円を寄託する旨の契約(以下本件敷金契約という)を結び、同日右金員を被告に対し交付した。

(三)、原告は、(一)項の租税債権を徴収するため、滞納会社が被告に対し有する将来生ずべき右敷金返還請求権全額について、昭和四六年六月二四日国税徴収法六二条に基づき差押し、右債権差押通知書は同月二九日ごろ被告に送達され、差押の効力を生じ、同法六七条によりその取立権を取得した。

(四)、右差押にかかる敷金については、本件敷金契約において、「賃貸借が終了し滞納会社が地上物件を収去して土地を明渡すのと引換に滞納会社へ支払うものとする。」旨の約束が存する。

(五)、滞納会社は、本件土地の上に建物を建築し、その所有権保存登記を了し、その建物を所有していたところ、当該建物は昭和四七年五月一八日競売法による競売により訴外太平産業株式会社(以下訴外太平産業という)に競落されて同会社にその所有権が移転し、同四七年六月はじめ頃、右会社は被告に対し右所有権移転に伴つて本件賃借権を譲受けたとしてその承諾を求め、被告は、その数日後に右会社に対し右譲受を承諾する旨答え、さらに同四八年五月一四日、被告と訴外太平産業との間で本件土地の賃貸借契約が成立した。

(六)、本件賃貸借契約においては、地上建物が競売に付せられたときは賃貸人は契約を解除できる旨定められており、被告は右のとおり本件借地上の建物の競落後右競落人との間で本件土地の賃貸借契約を締結しているから、右新賃貸借契約の成立により、被告と滞納会社間の本件賃貸借契約は解除されたものというべきであり、同時に滞納会社の本件土地明渡義務が消滅し、昭和四八年五月一五日右差押にかかる敷金三〇、〇〇〇、〇〇〇円の返還請求権が発生し、同時に弁済期が到来した。

(七)、よつて、原告は被告に対し、右被差押債権金三〇、〇〇〇、〇〇〇円及びこれに対する弁済期到来後の昭和四八年五月一五日から完済まで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

3、抗弁につき次のとおり述べ、

抗弁中、(一)項のうち請求の原因(五)項で主張した限度の事実及び(二)項の事実を認め、(一)項のその余の事実及び(三)項の事実を争う。

二、被告訴訟代理人は、

1、次のとおりの判決を決め、

(一)、原告の請求を棄却する。

(二)、訴訟費用は原告の負担とする。

2、答弁として次のとおり述べ、

請求原因中、(一)項の事実、(二)項のうち各契約締結日を昭和三六年九月一日とするほかの事実、(三)項の債権差押通知書が主張のとおり送達された事実、(四)項の事実、(五)項のうち冒頭の地上建物に関する事実及びこれが主張の競売に付され訴外太平産業がこれを競落した事実並びに賃借権譲受を承諾されたい旨の申込とその承諾のあつた事実を認め、その余はすべて争う。

3、抗弁として次のとおり述べた。

(一)、訴外太平産業は、本件借地上の建物を競落してその所有権を取得した直後の昭和四七年六月初頃、被告に対して口頭で敷地賃借権譲受に対する承諾を求める旨申出でたが、その際「地上建物の所有権取得に伴い敷地賃借権を譲受けたから承諾されたい。もし承諾されない場合は借地法第九条の三に基き裁判所へ右承諾に代わる許可の申立をする予定である、もし承諾されるならば、右許可申立事件で裁判所から通常定めている借地条件の変更、財産上の給付に応ずる用意がある。」旨申しそえたので、被告は、右申立及びこれによりなされるべき許可内容を考え、その数日後に、右会社に対し、「右譲受を承諾する。借地条件の変更、財産上の給付については、許可事例を参考にしてこれに準じて定めるので、その具体的金額は後日協議する。」旨答え、ここに右賃借権譲受を承諾し、同四八年三月一四日、右当事者間で右承諾料を金一九、〇〇〇、〇〇〇円とすることを合意したもので、この間、大阪国税局担当者から被告に対し差押債権の支払を求められたが、訴外太平産業が被告との間で既に成立した約定に相違するとして承服しなかつたもので、被告としてはやむなく右承諾料の金額を合意したものである。

(二)、訴外太平産業は、昭和四八年五月一四日、右承諾料を支払つたが、その際、右承諾料をも、敷金の追加として、将来本件賃貸借契約が終了し、その借地の返還と引換に右金額を右会社に支払う旨合意した。

(三)、なお、右承諾に際して、賃料を若干増額したが、その他の賃借条件に変化はなく、又本件競落以後の敷金の処分については、前賃借人と競落人及び賃貸人との間で何らの取り決めもなされていないし、前賃借人との間で本件賃貸借契約を解除したこともない。

(別紙)

滞納租税債権一覧表

〈省略〉

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